お墓のお手入れには水を使います。まず、多少水に濡れたり汚れても大丈夫な服装を用意しましょう。
水道とバケツとひしゃくは墓地に備え付けの場合がありますが、水を持っていく必要がある場合、20Lのポリタンク一杯かバケツ二杯分くらいの水は欲しいところです。必要な道具として、タオルなどのやわらかい布をできれば3枚。
最後に、お墓のお手入れは雨の後の晴れた日に行うことをおすすめします。お墓の汚れのなかでも落ちにくいものは、雨上がりの乾燥時につきます。
まず、表面の砂や埃などの汚れを落とします。砂埃が酷い場合はやわらかい刷毛やタオルなどで払ってから、高い所から順に水で洗っていきます。水鉢や花立の汚れた水も捨てて水洗いしておきましょう。水鉢の鉢の部分が磨かれていない場合、タワシで擦って汚れを落としておきます。
磨いた石の表面はつるつるとしていて素手で触れると気持ちの良いものですが、苔の生え始めの物などが石の表面についていると、ざらついた感触が残ります。これらを柔らかい布やスポンジ,タワシで水をかけながら擦り落としていきます。細かな砂粒が落ちる前にあまり強く擦ると、石の表面に細かな傷がつくので注意しましょう。
ざらつきが無くなったら、水垢のつきやすい石の際(キワ)の部分(石が乾燥するときに最後まで水が残っている部分)を布(できれば先程のものとは別の布)やスポンジでしっかり擦っておきます。ここは雨の後に水が乾燥する際、周囲の汚れを集めてきて、だんだんと積もっていく場所です。汚れが積もって黒くなりかけている場合は、弊社にてクリーニング用の研磨パッドを販売しております。
最後に水洗いし、ざっと水分を拭き取ってから、全体を柔らかい布で乾拭きしていきます。完全に乾燥させる必要はありませんので、布をよく絞って水気を取りましょう。
少し古いお墓ですが、比較的、手入れがされています。コケはほとんどついていません。水垢(黒ずみ)は余程こまめに手入れしない限りは付着していきます。
手入れの際の注意点です。こすり洗いで落とせる汚れには限りがありますので、落ちない汚れは一度、石材店にご相談ください。石に染み込んだ汚れは落としづらいので、早めに対処しましょう
クリーニング後の状態です。コケは専用の薬品で、水垢は専用の研磨紙で擦り落とします。研磨されていない石の水垢は強めの薬品とやわらかいブラシで落とします。
お墓参りの際は、お供え物はできるだけ持ち替えるようにしましょう。果物は石にアクが付くものも多く、何より鳥が荒らします。スチール缶は錆の原因になります。
頑固な水垢を落とすのに、ケレンやカッター,研磨材,洗剤,薬品を使う場合、正しい使い方や道具を選ばないと、墓石を傷つけたりシミになることがあります。特に酸性の洗剤は短時間で石の艶を落としてしまいます。ガラスの掃除に使える研磨材にもご注意ください。石の表面にはガラスよりずっとやわらかい部分があります。我々石屋にご相談の上、ご利用ください。石屋がクリーニングに使う道具であっても、使い方を誤ると墓石を傷つけます。
タワシは天然素材の物はあまり問題がありませんが、樹脂製のものは砂粒が毛先に食い込みやすいので擦り過ぎないようにしましょう。金ダワシは磨いてある部分には絶対に使ってはいけません。
石の汚れにはいくつもの種類があります。コケ,水垢,アク,錆など、それぞれ、対処方法が異なりますので、落ちない汚れは無理をせず、我々石屋にご相談ください。酷い汚れであっても、コケの場合は簡単に綺麗になります。また、木の実や動物が原因によるアクや錆などの石の内部に浸透する汚れは、対処が遅くなるほど落とすのが難しくなります。
黒御影石は多くが斑糲岩(ハンレイガン)と呼ばれるもので、花崗岩よりも柔らかい石が多くなります。しばしば、白く汚れるので水洗いはよくないと言われていることが多いようですが、これは間違いです。雨は水道水よりもずっと汚れています。手入れをしないでおくと、花崗岩よりも対処が難しくなります。お手入れの方法は同じです。カルキの白い汚れを残したくない場合は、最後にしっかり乾拭きしておくことが重要です。
黒御影石はまた、虹ヤケと呼ばれる現象が現れることがあります。これは、主にアルカリ環境下で石の表面付近のアルカリ成分が水分中の水素と交換されることによって起きる現象です。表面の軟質の膜を取り除いたとしても石自体が侵食されており、研磨が必要となりますので、主な原因となる水分、特に生物の死骸や糞尿を含む水分をこまめに取り除くしかありません。
乾拭きの際、石と石の隙間から水分がいくらでも湧いて出てきて拭き取れないということがあります。これはお墓の目地が取れてきているのが原因です。本磨きの御影石の場合、目地が失われると汚れや石同士の剥離の原因となります。目地は定期的なメンテナンスが必要なものですので、目地入れをご用命ください。目地入れの費用はかかる手間に依りますが、少量であれば数千円で承ります。
玉垣や巻き石などの目地が切れている場合、水分の凍結により石の隙間が開いてしまうこともありますので、早めに目地入れをご用命ください。
お問い合わせはこちら安い石材を使ったお墓は、しばしばコーティングで吸水率を下げ、経年劣化を防いでいる場合があります。コーティングは2,3年、長くても5年程度でやりなおす必要がありますが、このようなお墓は無理に擦らず、砂埃と水分の除去のみ行った方が良い場合があります。弊社ではお墓のコーティングはあまり勧めておりませんが、そのようなお墓の場合、お買い求めの石材店にメンテナンス方法を確かめたうえでのお手入れをお勧めします。
弊社でもお墓のコーティングは承っております。ただ、吸水率の高い安価材を除き、弊社で扱っているほとんどの石種はコーティングは必要ありません。コーティングは数年で再施工する必要がありますので、我々としては吸水率の低い良質な石材を使った方が良いと考えております。
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